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2010年11月12日

競技の垣根を超えたチャレンジ

zenpro-thum4.jpg快晴続きの日本列島。朝起きて、窓の外を覗き、一面に広がる濃いブルースカイを見た時っていちいち無駄にテンション上がったりしませんか?「会社に行ってパソコンに向かうだけじゃもったいないぜ。」そんなときは、可能な限り自転車通勤を試みる僕、ゴリ蔵です。一昨日、久々に20キロある会社までの道のりを自転車で走破しました。それでも行きはヨイヨイ、帰りは・・・です。ほんと、少しづつですが寒くなってきましたよね・・・。って、寒くなってきたことも問題ですが、僕の場合、夜11時や12時近くに会社を出ると車の数が少ないもんで、ついつい”もがき病”がでてしまうんです。体育会系のノリといいましょうか・・・。環八でもがき、世田谷通りでもがく。さらに坂道ダッシュ有り。(もちろん安全第一、交通規則にしたがって)結果、疲れ果てて帰ったらすぐ寝てしまうといった感じです。普通に乗ればいいのに・・、そうもいかないんですね。
そんな自転車ライフを送っている僕ですが、スピードが上がりペダルの回転数が上がったとき、いつもある症状がでます。それは「脚が三角に回る」というもの。いわゆる回転力の話ですよね。自分の能力以上のスピードになるとペダルの軌道に合わせて、脚が円を描けなくなってくるんですね。(ギア比が低くければ低いほどスピードを出すためには回転が必要になってくる。僕の自転車はギア比が低いんで回転が必要なのです。)つまり、パワーさえあれば自転車が進むわけではなく、脚を回転させる能力も、スピードを追求する自転車選手にとっては重要な要素となるのです。(もちろんその先にはペダリングの効率性とか、そういう話が出てきますが、そこまでは僕の能力ではちょっと・・・汗)そんなとき、いつも思い出すのがBMXレーサーの回転力の凄さです。実際、先日のサイクルモードで全日本チャンピオンの三瓶選手がトップ競輪選手の平原選手にゴールドスプリントで勝ったという話も聞きましたが、20インチの小径車であれだけのスピードを出す訳ですから、やはりBMX選手の回転力は自転車選手の中でもトップレベルじゃないかと思うわけです。
前置きがだいぶ長くなりましたが、先週の日曜日、全日本プロ選手権BMX大会の取材で久々に、その凄さを目の当たりにしてきました。いやいや、やはりすごい。ペダルの部分だけ早送りしたかのように、ぐるんぐるんっ回ってました。しかし、そんな個人的な視点だけでは仕事になりません。今大会の注目は、やはり元BMX全日本チャンピオンの黒田選手と西岡選手の参戦。今年競輪デビューを果たした彼らが2年のブランクを経てBMXコースに帰ってきたのです。回転力勝負のBMX選手が、重いギアを踏みこなさなければいけない競輪で培ったパワーを身につけたらどうなってしまうんだろう。リバウンド王桜木花道が、ジャンプシュートを覚えたように・・・ピッコロとネイルが同化したように・・。無茶苦茶強くなってしまううのではないかという・・素人的安易な考えと妄想、そして期待が膨らんだりしませんか? しかし、選手たちにお話を聞くと実際のところ現実はそう甘くないようです。

11月7日にCSCで行われた全プロ選手権。レースの模様はもちろん動画で見ていただければ分かるように、圧倒的な実力差で西岡選手と黒田選手のワンツーフィニッシュとなりました。興味深かったのは、その後の「アルティメットレース」、「競輪 VS BMX」。勝ったのはBMXレーサーの吉村樹希敢選手でしたが、ジャパンカップのクリテリウムの時と同様に、競技の垣根を超えた対決って見ごたえありますね。
上記したように、BMXのレーサーの回転力を持って競輪レースに必要なパワーを身につけることができれば・・これまでにない最強の選手が生まれるのでは・・という安易な期待を持つ僕です。(全くもって個人的意見です。すみません)それでも実際に、世界ではBMX出身の選手がトラック競技に進むことはよくある話です。代表的なのはイギリスのジェミースタッフでしょうか。BMXで世界チャンピオンになった後、トラック競技に転向し、KEIRINとチームスプリントで世界一に輝いた彼。北京五輪では、チームスプリント第1走を務め17秒136のタイムをたたき出し、驚異的なダッシュ力で金メダル獲得に貢献しました。パワーはもちろん後から付いてくるものだと思います。しかし、少年時代から培った20インチのBMXを扱う”技術”は、どんな自転車競技でも通用する最高の技術であるということは、現在、世界的に証明された事実として知れ渡っているのです。
そうした中、国内でもBMX出身の選手たちが競輪デビューを相次いで果たしています。しかし、なかなか現実は厳しいようです。今回彼らと話をしましたが、競輪ではなかなか思うような結果が出ずに必死な様子が伺えました。黒田選手に関してはレース中に落車し、早くも鎖骨骨折という洗礼をうけたようで、だいぶ参ってる状況。本職・競輪選手としていかに結果を残すか・・・最優先すべき課題がある中で、BMXに乗れる状況ではないことは想像に難くありません。
彼らは競輪学校に入学を果たす頃、「競輪選手とBMXライダーの両立」を口にしてました。他の競技への”転向”ということはよく聞く話ですが、やはり”両立”となるとさらに難題となるに違いありません。
黒田選手は「縦の動きがあるBMXの動きに、まずは目が慣れませんね。それとジャンプの感覚。厳しいですね。まずはS級に上がるためにも、怪我ができないんで、競輪一本で頑張りたいです。それから先はそのときになってみないとわかりません。」とのこと。
一方で西岡選手は「この2ヶ月乗ってきて、だいぶ感覚が戻ってきました。オリンピックを視野に入れて、これからはBMXの練習量も増やして頑張りたいです。」
そんな彼らの競輪選手としての活躍はもちろん、欲を言えばオリンピックBMX日本代表入りへの期待は高まります。そうした中、現実問題厳しいだろうという意見もけして少なくありません。ともにアルティメットレースを走ったベテラン佐伯進選手は「BMXは競輪と違ってジャンプなど3次元の動きが必要とされます。技術が全く違うので、両立出来るような簡単なものではありません。」と言います。
昔から、オリンピックを目指す競輪選手の課題といえば、「国内競輪とトラック競技の”両立”」でした。バンクの形状、戦略、自転車は違えど、同じ2次元の動きの中で戦う2つの競技でさえ、数々の課題を抱え、選手たちを苦しめています。
そうしたなか、技術の違う2つの競技の両立は、想像を絶する課題が山積みです。しかし、実際にその夢をいだき、続々と選手たちが競輪界に足を踏み入れようとしています。今後もこの流れが続くのか・・・。それは彼らの戦いにかかっているはずです。ただし、トレーニングの方法など全てが未知の世界にあるなか、互いの競技に活かせる方法をゼロから模索していかなければなりません。
競技の垣根を超えたチェレンジ。同じ自転車競技だからこそ可能性のあるチャレンジ。こうして選択肢が増えることで、互いの競技の発展、自転車の発展に大きな意味を持つように思います。そのためにもまずは、もっと多くの人に彼らの戦う姿を認めてもらう必要があるのではないでしょうか。

ディレクター ゴリ蔵

<動画>
「全プロBMX 2010」

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