銀輪の風:世界の、シクロ・リポート:BS-TBS毎週月曜23:30〜24:00放送

自転車番組の最新情報をRSSで配信しています

世界各国の自転車競技のレースシーン、そこに躍動するアスリートの熱い思いを伝えます

シクロの視点番組ディレクター、自転車通たちが不定期に執筆、独自の視点で話題を提供します

シクロの視点 第1回

ディレクターA

BS-iの新番組『銀輪の風』が始まった。かなり複雑な経緯を辿ってこの番組は生まれてきたが、そんなことはもう、すでに遠い昔のことのように思える。
番組が始まってしまった以上、何はともあれ、これを作り続けなければならない。
取材やロケ、編集に追われる毎日にあって、すでに何のためにこの番組を作りたいと思ったか、あの頃の自分たちというものを忘れかけているのではないか、といえば云い過ぎだけれど、とにかく物ごとを冷静にふり返る暇がない。番組公式ブログを作るにあたって、このような稿が設けられたことに、私は事実よろこんでいるのである。書くことは、過去の自分と向き合うことであり、現在の自分を知ることだからだ。よい仕事を続けていくために、これは必要な営為である。

この稿には、「シクロの視点」という題名がついている。要はシクロ・イマージュという自転車番組を専門に作っている会社のスタッフがそこでしか知り得ない情報を基に自転車に関するあれこれの事象を論ずる稿、というわけだ。少数だけれど熱心な番組視聴者、ないし自転車愛好家の方々がこれを読み、楽しんでいただけたら幸いである。
日本の自転車文化というものは、ヨーロッパのそれと比べて、おそらく百年以上の差がある。日本にいるごく少数の自転車文化受洗者たちは、そのあまりの違いに、あるいは日々鬱々として楽しまないに違いない。交通行政のエアポケットに落ちた自転車なる乗り物にまたがり、クルマに追われ人をよけ、泥棒の影は常に背中に感じつつ、駐輪場は将棋倒し、保険制度は整わぬまま、登り坂の途中で赤信号に遭う。人々の敵愾心たる風当たりは、サステイナブルに強い。銀輪の風どころではない。

とはいえ、自転車というものが、最も身近な乗り物であることは疑いを入れない。そして、自転車には大義がある。環境破壊が最小限で、健康によく、安い。さらに、その遠くへ拡がり過ぎない行動半径は、崩壊しつつある地元商店街的(「わが町」「オラが村」的)世界を保存ないし復興させるひとつのトリガーとなり得るし、今日の地方分権・リージョナリズムへの流れに棹差す理想的な移動手段として、自転車というものの桧舞台はすでに用意されつつある。アムステルダムには及ばずとも、長野県飯田市や静岡県富士宮市など、「自転車を活用した町づくり」に取り組む、開明派の自治体も続々登場してきている。私たちの番組が、それら社会的IQの高い人々に何らか有益な情報をお伝えすることができたならば、この上ない喜びであり、それをまた、この番組公式ブログ上で再度交換する機会が得られたことは、二重に私たちをモチベートする重要な仕事として、かなり気合いが入っているのである。

読者の皆様のご指導ご鞭撻を心よりお願い申し上げ、初稿のご挨拶とさせていただきます。

この記事のトラックバックURL:
http://www.ginrin.tv/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/7

コメント投稿フォーム